ベネトロンR(ラフマ葉抽出物)の抗うつ、抗不安作用
はじめに
ストレス社会と呼ばれる現代、うつをはじめとする心の病が社会問題化してきている。平成17年度の厚生労働白書で取り上げられているように、自殺死亡者が1998年以降毎年3万人を超える異常事態である。最近になって行政も「自殺予防に向けての提言」「こころのバリアフリー宣言」「うつ対策マニュアル」などを発行し、動き出した。我々は植物に特化した医薬品原薬・機能性食品素材メーカーとして、科学的エビデンスに裏付けられた製品を通じて人々の心の健康維持に貢献すべく、開発を進めてきた。
1.ラフマとベネトロンR
メンタルケアに使える素材として注目したのは、中国に自生するキョウチクトウ科の多年生草本ラフマ(Apocynum venetum L.)の葉である。このラフマの葉は中国では古くからお茶として飲用されており、中華人民共和国薬典に「心を安定させる」との記載がある1)。
ベネトロンRは、ラフマの葉を含水アルコール抽出し、フラボノール配糖体hyperosideおよびisoquercitrinを合計4%以上含有するように精製した粉末状のエキスである。LC-MS分析により、クロロゲン酸、フラボノール配糖体、カテキン類、プロシアニジン類などポリフェノール類が豊富に含まれていることを確認している。
2.メンタルケア素材としての機能性
2−1 抗うつ活性
抗うつ薬の評価法として広く用いられている強制水泳試験法により、ベネトロンRの抗うつ活性を検証した。その結果、ベネトロンRはポジティブコントロールとして用いた抗うつ薬と同様に抗うつ活性を示した2)(図1)。ベネトロンRはうつに関与している脳内アミン類のうちセロトニン濃度には影響を与えなかったことから、抗うつ薬イミプラミンとの作用機序の違いが示唆された3)。
2−2 抗不安活性
抗不安薬の評価法として広く用いられている高架式十字迷路法により、ベネトロンRの抗不安活性を検証した。その結果、ベネトロンRはポジティブコントロールとして用いた抗不安薬と同様に抗不安活性を示した(図2)。さらに受容体遮断実験を行ったところ、抗不安作用の一部はGABA受容体の感受性亢進によることが明らかとなってきた4)。
2−3 抗酸化活性
近年、活性酸素の病態生理化学的作用が明らかにされてきており、活性酸素消去の重要性が認識されている。なかでもO2・−は他の活性酸素種生成カスケードの最上流に位置するため、その消去は特に効果的である。様々な植物抽出物のO2・−消去活性を比較したところ、ベネトロンRは典型的なO2・−消去物質である(−)-epigallocatechin gallate (EGCG)を大量に含む緑茶抽出物ティアカロン90と同程度のO2・−消去能を示した(図3)5)。
3.安全性
ラフマ葉は長きに渡り茶葉として利用されてきた歴史から安全であると考えられるが、ベネトロンRは特定の成分を濃縮した抽出物であることから、安全性を改めて検証した。
まず動物を用いた毒性試験において、ベネトロンR投与群に体重減少や臓器重減少などは一切観察されなかった(社内データ)。また、薬物相互作用が報告されて以来利用が減少している抗うつ素材セントジョンズワートとは異なり、ベネトロンRは薬物代謝酵素CYP3Aを誘導しなかった6)。
さらに、ベネトロンRを含有する製剤を作製し、健全な男性社員を対象として、12週間の連続摂取(ベネトロンRとして50mg/人/日を8週間、続いて150mg/人/日を4週間)によるヒトモニター試験を実施した。その結果、一般検査値、血液学検査値、生化学検査値、尿検査値のいずれにおいても異常値は現れず、むしろ改善傾向が見られた(社内データ)。肝障害という副作用により利用が制限されている抗不安素材カバに替わる素材としても、ベネトロンRは有効と言えるだろう。
おわりに
ベネトロンRを含有する食品を摂取したモニターからは、「思考が前向きになった」「寝つきが良くなった」「過敏性大腸炎が軽減した」などの感想が寄せられ、臨床でも月経前症候群に対して著効を示したと報告されている。うつや不安は誰の身にも起こりうる心の風邪である。ベネトロンRによるリラックス効果が一人でも多くの方の心の健康に役立つことを願っている。
参考文献
1) Pharmacopoeia Committee of the Health Ministry of the People's Republic of China (ed.): Pharmacopoeia of People's Republic of China, Vol. 1, Guangdong Scientific Technologic Publisher, Guangdong, pp. 170 (2000)
2) Butterweck V. et al.: Biol. Pharm. Bull., 24(7), 848-851 (2001)
3) Butterweck V. et al.: Pharmacol. Biochem. Behav., 75, 557-564 (2003)
4) Grundmann O. et al.: submitted for publication
5) 藤田洋史ら: 医学と薬学, 54(4), 491-503 (2005)
6) Kobayashi M. et al.: Biol. Pharm. Bull., 27(10), 1649-1652 (2004)
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